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飯場と月
トビラノさんの叔母、朱女ちゃんが本を出しました。
幼い頃の思い出を手繰り寄せるようなエッセイ集。でも大人になった朱女ちゃんの真ん中に確かにそしてふつふつと存在する記憶。その一片一片をこっそりと教えてもらっているような気持ちになりました。ページをめくりながら、私の隣には幼い頃の朱女ちゃんがずっとくっついていて、「こんなんやってん! あんなんやってん!」と面白おかしくおしゃべりをしてくれていたように思うのです。
だからなのか、最後のページを読み終えて、本を閉じた時お腹の中がほくほくと暖かくなっていました。そして「あ、もうあの子どっか行っちゃったんやな」とふと寂しい気持ちにもなりました。
でもまたこの本をひらけば朱女ちゃんと家族に会えると思うと嬉しいのです。
なにを怖がることがあろう。
こんなにも安心きわまる場所が、ほかにあろうか。
あたしは読みかけの「ふたりのロッテ」を抱かえてソファに丸まる。
子どもにこんなこと言われたら、もう何もいらんわ。
幸せな本をありがとう。朱女ちゃん!
『飯場と月』 沢朱女 ヒャクジツコウ舎刊 1250円+税